令和2年4月1日民法改正②~修繕(賃料減額請求)~
【出典】法務省HP


先日は根保証契約について記載いたしました。
本日は、賃貸借契約期間中の修繕に関する民法改正について記載したいと思います。
令和2年(2020年)4月1日から、
①賃借人がした修繕については賃貸人に費用請求ができる
※賃借人が賃貸人に修繕が必要である旨を申し出したが、賃貸人が相当期間修繕を行わない場合
※急迫の事情があるとき
②設備故障等により、使用できなかった割合に応じて賃料の減額請求ができる
※現民法でも規定はあるが明文化されていなかった
※残置物扱い(修理保証しない旨を説明した)設備を除く
※減額割合については任意規定
上記2点が大きな変更点です。
まず①については、現民法では明文化されておらず、基本的に貸主に無断で手配をしたものについてはその都度協議、実務上では貸主が手配をしたと仮定して、通常手配される工務店等と、賃借人が手配をした比較的高額な出張費を取られる水道業者等の請求額との差額を賃借人負担としていることもありました。
改正民法では、緊急度合いにもよりますが、賃借人が急を要すると判断し手配したものについては基本的には賃貸人の負担と記されております。
また、手配漏れによる賃借人の負担もその対象となります。
数年前より、自然災害による雨漏りや、物件の老朽化による漏水等が目立ってきました。
1990年~2000年築の入社当初築15~20年であった物件が築後30年を迎える物件も出てきました。
その分だけ不具合の件数や度合も多く、高くなってきていることは事実です。
所有・管理物件が多ければ多い程、手配漏れのリスクが高いため、注意が必要となります。
次に②についても、現民法では請求できるという単なる権利でした。
改正民法では具体的に「使用できなかった割合によって賃料の減額請求ができる」との記載が入ります。
具体的でありながら、抽象的な点として、
★減額の割合が決まっていない
上記があげられます。
2020年2月時点では、減額の割合は任意となっており、何を基準として行うべきかという点が不明瞭なまま改正される予定です。
1つの方向性として、日管協が作成するサブリース物件の賃貸借契約書が業界団体が出しているガイドラインとして参考にされるのではないかとも言われております。
免責期間を定め、その免責期間内に修繕が完了しない場合は、賃貸借契約書に添付する表により賃料減額の必要が生じる内容になります。
個人的見解としての問題点は、免責期間が短すぎることです。
サブリースの場合は賃貸人が管理業者であることが想定されるため、手配は賃貸人=管理業者が行えます。
しかしながら、一般物件(貸主と管理業者が異なる)の場合は、
●不具合連絡(入居者→管理業者)
↓
●賃貸人へ報告(どちらが手配するのか)
↓
●工務店等が現地調査(日程は入居者と調整)
↓見積書提出
●賃貸人の判断
↓発注
●再度入居者と日時調整
↓
●施工完了
上記の流れでは、全ての作業が1週間以内に終わることが稀であるということです。
特に、雨漏りの免責に「7日」と記載がありますが、仮に防水塗装が必要な場合に7日で終わること等なく、見積もり~作業完了までの最短でも2ヶ月は全戸から最大50%の減額請求を受ける可能性が出てくるということになります。
仮に40,000円の賃料のワンルーム20戸であった場合、
・通常:40,000円×20戸=800,000円/月
・減額請求:▲20,000円×20戸=▲400,000円
このようになれば、何の為に賃貸経営をしているのか分からない状態になります。
減額の金額については協議の上とされていますが、あまりにも賃貸人に厳しい改正内容となっております。
そのような中で、どれだけ賃貸人=オーナーの手助けができるかが、これから管理業者に求められるスキルであると感じております。